会議中に「あ、これ後でやらなきゃ」と思ったのに、席に戻る頃にはきれいさっぱり忘れている。移動中にいいアイデアが浮かんだのに、スマホを出すのが面倒でそのまま消えていく。こういう「消えていく情報」、地味にもったいないですよね。
特に、手が離せないタイミングほど「これは覚えておきたい」という情報がやってくるものです。料理や皿洗いをしながら、会議で相手が話している最中に。メモしたくてもできない状況って、1日のうちに何度もありますよね。そして残念ながら、そういう情報にかぎって、あとで思い出そうとしても出てこないんです。
先日の記事情報収集とリサーチを効率化する基本の考え方で、リサーチが遅い本当の原因は「集めた情報を保存する仕組みがないこと」だとお話ししました。この記事ではその中でも「そもそも情報を取りこぼさない」を、すでに持っている人も多いApple Watchで実践する方法です。最後に、新しいガジェットを買い足さずに済む使い方も紹介しますね!
そこで頼りになるのが、すでに手首についているApple Watchです。専用のメモ端末やAIレコーダーを新しく買わなくても、この1台で「消えそうな情報を拾う」役割は十分にこなせます。
情報は「あとで書こう」と思った瞬間に消えていきます。
Apple Watchを「手首のメモ帳」にする
私はApple Watchをかなり長く使っているのですが、時計・通知・健康管理以外で地味にいちばん助かっているのが、この「手首でメモを取れる」機能です。使うのは標準の「ボイスメモ」アプリ。手首に向かって話しかけるだけで、その場で録音が残ります。
ポイントは、スマホを取り出す動作すらいらないこと。情報が消える多くの場面って、「メモしたいけど、今スマホを出すのはちょっと」という数秒のためらいで起きるんですよね。歩いているとき、両手がふさがっているとき、会議中でスマホを触りづらいとき。手首を口元に近づけて一言つぶやくだけなら、その数秒のハードルがゼロになります。
たとえば私の場合、買い物中に「あの書類、月曜に出すんだった」と思い出したとき、カゴを持ったまま手首に一言つぶやいて終わりです。以前ならレジを出る頃には忘れていたような細かい用事が、確実に残るようになりました。効率化というと大げさですが、こういう「小さな取りこぼしがゼロになる」積み重ねが、地味にいちばん効きます。
スマホを取り出す3秒のためらいが、いちばん多くのアイデアを消しています。
声メモから「検索できるテキスト」までの流れ
ただ録音しただけだと、あとで聞き返すのが面倒で結局使わない、なんてことになりがちです。別の記事でも書いたとおり、大事なのは「見返せる形」にすること。そこで、録音を文字に変換してテキストで残すところまでをワンセットにします。手順はシンプルです。
STEP1:Apple Watchのボイスメモで録音する
思いついた瞬間に、手首のボイスメモアプリを開いて録音ボタンを押し、一言だけ吹き込みます。「議事録、金曜までに共有」くらいの短さでOK。長々と話さず、キーワードだけ残すのがコツです。
私自身、Series 9を数年使っていますが、いちばん出番が多いのは移動中や歩いているときです。駅に向かって歩きながら「あの件、あとで折り返す」と手首に一言。あとは、料理や皿洗いのような家事の最中みたいに「手が完全に塞がっている」時間ほど、Apple Watchが活きました。スマホを取り出せない状況にかぎって、なぜか大事なことを思いつくんですよね(笑)。
STEP2:iPhoneに自動で同期される
Apple Watchで録ったボイスメモは、iCloud経由でiPhoneのボイスメモアプリに自動で並びます。ここが地味に優秀で、「どの端末で録ったか」を意識しなくていい。手首で録って、あとで机のiPhoneやMacから開ける。別の記事で触れた「デバイスをまたいで同じ情報に戻れる」状態が、Appleの中なら勝手に完成しています。
同期を待つ間に別の作業をしていても、iPhoneを開いたときには手首で録った分がちゃんと並んでいます。「録ったのにスマホに入っていない」というストレスがないのは、Appleでそろえる地味な恩恵ですね。
STEP3:文字起こしアプリでテキストにする
最後に、録音を文字に変換します。iPhone標準のボイスメモにも文字起こし機能がありますが、議事録のように「話者を分けたい」「要約もほしい」場合は、無料枠の大きい「LINE WORKS AiNote(旧CLOVA Note)」や、録音ファイルを取り込める「Notta」といったアプリを組み合わせると便利です。テキストになれば、あとからキーワードで検索して一発で探せます。
ここまでを一度セットしてしまえば、あとは「手首でつぶやく→たまったら文字にする」を繰り返すだけ。毎回どこに保存するか迷う必要がなく、保存先が1か所に決まっているので、探し物そのものが起きません。別の記事でお伝えした「ツールは増やすより1か所に寄せる」を、そのまま実践できる形です。
私の場合は、文字にしたメモを最終的にひとつのメモアプリに集約しています。そこで「ただの記録」と「やること」を仕分けして、行動が必要なものはそのままタスク(ToDo)に落とすようにしました。ここまでやると、手首のつぶやきが「あとで検索できるメモ」で終わらず、「実際に片づくタスク」まで一直線でつながります。拾って終わりにしないのが、地味にいちばん効いています。
手首で拾って、文字にして残す。これで「二度と探さない」メモが完成します。
正直な注意点:Apple Watchが苦手なこと
便利な一方で、向いていない使い方もあります。まず、1時間の会議をまるごと録音するような長時間の用途には不向きです。バッテリーの消耗が大きく、本体の容量も限られるので、そこは専用のICレコーダーやAIレコーダーに任せたほうが安心です。ネット上でも「長時間録音はスマホや専用機のほうが向く」という声はよく見かけます。
もうひとつは、静かなオフィスや電車の中では、さすがに声に出しにくいこと。この場合は無理にしゃべらず、Apple Watchのメモや、後述のアプリへの手入力に切り替えるのが現実的です。文字起こしアプリの無料枠にも上限(月120〜300分程度)があるので、長時間を毎日回すなら有料プランも視野に入ります。
正直に言うと、私がいちばん引っかかっているのは文字起こしの精度です。数年使っていても、固有名詞や専門用語はけっこう誤変換されますし、早口で吹き込むと後から「これ何だっけ」という謎テキストが残ることもあります(笑)。なので私は、あとで自分が読んで思い出せれば十分と割り切って、固有名詞はゆっくり区切って言う、一文を短くする、を意識しています。完璧な文字起こしを求めるより「思い出すためのトリガー」と考えると、この弱点はほとんど気にならなくなります。
とはいえ、これらは「使い分ければいいだけ」の話です。Apple Watchに全部を任せようとすると不満が出ますが、役割を「その場で消えそうな一言を拾う」に絞れば、これ以上ないくらい優秀な相棒になります。苦手なことを知っておくと、かえって気持ちよく使えます。
Apple Watchは「一言メモ」の名手。長時間録音は専用機に任せるのが正解です。
まとめ:手持ちのApple Watchが情報収集の相棒になる
冒頭の「席に戻る頃には忘れている」は、記憶力の問題ではなく、思いついた瞬間に記録する手段がないから起きます。手首につけたApple Watchに一言つぶやいて、iPhoneで文字にする。この流れができるだけで、消えていくはずだった情報が、あとから検索できる資産に変わります。
Apple Watchはもともと持っている人が多いデバイスですし、追加コストがほぼかからないのも大きな魅力です。高機能なAIレコーダーが気になる気持ちも分かりますが、まずは手元の道具で「取りこぼさない」習慣が身につくかを試してから、足りない部分だけ専用機を足す。この順番のほうが、無駄な買い物になりにくいです。
新しいガジェットを買う前に、まずは手元のApple Watchでこの仕組みを試してみてください。別の記事で紹介した「集める・保存する・見返す」の、いちばん最初の「取りこぼさない」を担当してくれる、頼れる相棒になりますよ。

